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私もシスターも言いたいことを言い終え、他のみんなも別の話題を話せる雰囲気では無くなってしまっている。
そんな中、私の袖を引っ張ったララが、沈黙を破った。
「ねぇね!すらむ?ってなぁに?」
私はキョトンとし、シスターと目を合わせる。
シスターが頷くと、私はララの目線に合わせて屈んだ。
「『スラム』って言うのはね、国の周りにある壁のない、人の住む町の事なの。」
「壁がないの?! それじゃあ悪い空気を吸っちゃうよ!」
「そうだね。国の外は瘴気で満ちているものね。でも、外壁の周りなら瘴気が薄いから、身体への影響が少ないの。」
瘴気はこの星を覆う有害な空気のことだ。大量に吸えば身体を蝕み、最悪死に至る。その瘴気を防ぐために国を囲むドームがあるんだ。
シスターに目を向ける。6歳児相手に残酷な現実を話している自覚があったからだ。
シスターは無言で頷いた。それは続けていいという意味。
「なんでそんな危ない所に住んでいるの?」
「それはね、悪い事した人たちは国から追い出されちゃうの。そうして悪い人たちが集まって出来たのがスラム。だからララもいい子にしてないと、スラムに追い出されちゃうよぉ!」
そう言ってララに襲いかかるように両手を広げた。
少しやり過ぎたか、ララが涙目になってしまう。
「ねぇね、物知り。」
と、リリ。ごめんね、授業で習った事話しただけなんだ…。
「ねぇね、明日そこに行くの?悪い人に食べられちゃうよ!」
と、続くララの可愛い発想に思わず吹き出してしまう。
「あっははは! 悪い人は人を食べたりしないかなぁ。大丈夫。教官たちもついてるし、それにこの辺じゃ『ケモノ』の目撃例もないしね。」
「けもの?」
今度は2人同時に聞いてくる。
しまった! そう思い、助けを求めるようにシスターのほうを向くと、案の定首を横に振られる。
「えっと…あ、あはは…そ、それよりご飯!私お腹減ってるからおかわりしようかなぁ!」
「そうね!ほら、ララ、リリ。お姉ちゃんにおかわりよそってあげて。」
シスターの言葉に双子は「はーい」と素直に返事をし、皿にサラダやおかずを乗せていく。
危ない危ない…。ララたちにはまだ早い話までするところだった。ふと、目線を上げるとジト目のシスターと目が合う。
申し訳なくなり、ごめん!と顔の前で手を合わせる。
「ねぇね、もう『いただきます』はしたよ?」
ララのツッコミを皮切りに、食卓に笑顔が戻った。
こうして楽しい一時が過ぎて行く。胸いっぱいの勇気と優しさを貰って。
よーし、明日の演習頑張るぞ!
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