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「今日は『ケモノ』について話しておこう。」
「教官!ケモノって何ですか?」
「ザック、少し黙っててくれ。今からそれを説明するから…。」
脳天気なザックに呆れる教官。何も変わらない学校の日常。
「話が逸れてしまったな…。えっと、そうそう『ケモノ』についてだ。みんなは『動物』を知っているか?」
「?」
「…だろうな。動物というのは大昔、この星に存在していた人間以外の生き物の事だ。四足で歩いたり、牙があったり空を飛べたり。そんな生き物たちが人間と共存していたんだ。」
人間以外に生き物がいたなんて…。みんな驚きを隠せない。
教室内が騒がしくなるが、教官も想定していたのか暫く私たちを静観していた。
やがて騒ぎが落ち着くとアネットちゃんが手を挙げた。
「教官! その『動物』は絶滅したんですか?」
「絶滅した。…とは言い切れない。『ケモノ』がいるからな。」
それって、どういう……。
「『ケモノ』というのは瘴気を浴びた『動物』の成れの果てとも、戦時中に『動物』をベースに作られた生体兵器とも言われている。どちらにしても『動物』に酷似している事や人類の敵であることに変わりない。」
「教官…。そのケモノは……。」
「国の外にいる。」
「っ!」
それを聞いて、俯く子や涙を浮かべる子たち。当たり前だ。
国を守る、収入が安定している。そんな理由で入学した子がほとんどで、何から守るのかなんて誰も知らなかったのだから。
「あっ! あぁ…ほらほら落ち着け! 大丈夫! 大丈夫だから!少なくともこの国の周囲には居ない!この国が出来てから1度も目撃の報告は受けていないから! だから大丈夫だ!」
みんなの反応に、教官が慌てて言葉を付け足した事で、それ以上騒ぎが大きくなることは無かった。
私の頬を伝う涙は安堵からか、それとも敵への恐怖か。今ではもう思い出せない。
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