頂く ～命をありがとう～

『あんた、バカ？』

　人気アニメのセリフじゃないけど、これしか浮かばなかった。

『なんで？』

『手首に筋いれたぐらいじゃ、ドラマみたいに死なないんだよ。ずーっと、ズキズキ痛いし、助かっても跡が残るし良くない。手首から切り落とす位の覚悟が必要なんだ』

　腹が立ってきた。

『痛そ！』

『楽して死ねないんだよ。飛び降りだって意識無くならないで、自分が潰れる音が聞こえるって話だし』

『マジ?　』

『マジ！　バンジージャンプしたって、みんな元気じゃん。飛んでも気を失う人なんて一部だよ』

『そうかも……』

　死に方を選べる人なんて実はあんまりいない。大抵は自分の意思とは裏腹の死を迎える事になる。与えられた命を大切にしようとしない天音の甘ったれた考えにイライラが募る。

『そもそもなんで死のうと思ったの？　』

『うち、母子家庭でしょ。お母さんが死んじゃって、一人になって辛いの。　
　ねえ、冴姫(さき)ちゃんのお家病院で、冴姫(さき)ちゃん医学部で頭いいでしょ。なんか、良い方法ないの？　』

　私は、ベッドの上で転がりながら返信した。

　『話を聞いてあげるから遊びにおいで』