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私の部屋に入って、久しぶりに顔を会わせた天音はかなり驚いた様子だった。
「冴姫ちゃんどうしたの? こんなに痩せて」
電動式のベッドを起こし背凭れにして起き上がる私を憐れみ深い瞳が見つめる。
「病気なの、私は死にたく無いのに病気に殺されるんだ。不公平だよね。死にたい天音が健康で、生きたい私が死にそうで、交換出来ればいいのに……」
「冴姫ちゃん……」
コンコンとノック音が聞こえ、母親が紅茶とケーキをトレーに乗せて入ってきた。
「わざわざ来て頂いて嬉しいわ。ありがとう。どうぞ召し上がって、美味しいのよ。ここのケーキ」
「はい、ありがとうございます」
いつまでも天音を見つめ、部屋から出ない母親に声を掛けた。
「お母さん、悪いけど、私達、話があるから」
「ああ、ごめんなさいね。どうぞごゆっくり」
母親は、名残惜しそうに部屋を後にした。
気配が消えるのを待つ間、ケーキのクリームを少しだけ口にした。
大好きなチョコレートケーキ。
ふわふわのスポンジに挟まれたクルミがアクセントの食感。生クリームもチョコレートが甘すぎずしっとりしていて美味しい。
大好きだったチョコレートケーキ。
もう、私の体はケーキを1つ食べ切れる程ではなくなっていた。気持ちは食べたくても体が受け付け無い。
天音は、美味しそうな表情を浮かべて、次々にケーキを口に運び、全て食べ切っていた。
私は、それすらうらやましく思いながら天音を眺めていた。
そして、再び聞いた。
「で、天音、あんた死ぬの?」
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