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ちーん。
おりんの涼し気で不気味な音が部屋に響いた。
「お父さん、行ってくるね」
中山園子は父の遺影の喉を指で撫でた。
今となっては、これが毎朝の恒例の儀式のようなものだった。
ホトケさん。
父の喉にはホトケさんが住んでいる。
昔、父はそう教えてくれた。
ホトケさんは偉い人。
よくしてあげないとね。
そんなこんなで、もう15年は父の遺影の喉を撫で続けてきた。
「やっば、行かなきゃ」
園子はスクールバッグを肩に掛け、家を飛び出した。
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