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長々と彼女について話したが、結局俺は彼女と付き合えたのかどうか、そろそろ気になっていることだろう。答えはもちろん、イエスだ。
……え、知ってる? さすがにこの流れで失恋話なわけがないって? うーん、確かに。俺の口調とかでも判断はできるか。
まあいい。あと少しだけ。
デートの帰り道。もはや俺がボコボコに負かされる会となっていた、何度目かの公園デート。いつものように疲労でぼんやりしていた俺に、彼女は別れ際、俯いて何かをもにゃもにゃと言った後「いいよ」とだけ言い残し、電車に飛び込んだ。
彼女の言葉を理解するために、俺はポケーっと数秒間立ち尽くしていたようだ。「え、今のって告白の返事?」と聞き返そうと思ったときには、すでに遅かった。彼女の乗った電車はすでに動き出しており、中から手を振り、にっこりと微笑んでいた。すぐに見えなくなった。
毎回のデートでしつこく告白し、答えを茶化しながら催促していたため、さっきの言葉が告白の返事だと確信が持てなかった。
ラインをして確認することも考えた。だが、妙に高いプライドがそれを許さなかった。俺はその日、少しでも早く明日が来るようにと、早めに床に就いた。
次の日。大学の講義後の帰り道。会話でわざとらしいくらい「彼氏として」を連発した。嫌がるそぶりを見せない彼女の反応を見て、付き合えたことを実感したのだった。
普通に聞けなかったのかと、昔の自分に問いたい。これが20年間で一度も恋愛をしてこなかった男の醜態である。よく付き合えたものだと今でも思う。
そのときの俺は勢い余って「なんで俺のことが好きなの」と聞いていた。周りをはばからず大声で。その十分の一にも満たない、小さな声で彼女は返してきた。
「足速いから」
嘘。何その小学生みたいな理由。かなり拍子抜けした。まあ付き合えたからどうでもいいか、ひゃっふぉーいと5秒後にはなっていたと思う。
おしまい。
ここまでが、俺と彼女が付き合うまでの経緯。できるだけ端的にまとめたつもりなんだけど、やっぱり長くなってしまった。付き合った後の話もしたいところだけど、ノロケになっちゃうから割愛で。そんな感じで大学卒業後も、そして俺が東京の大手商社に勤めて1年が経った今でも、交際は続いている。
そして、現在。
今まさに、結婚の挨拶に伺うため、彼女の家に向かっている最中だ。
……え、場面展開が急すぎるって? 確かに速すぎたかもしれない。時を少し戻そう。
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