東村山音頭

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東村山音頭

「ずっとですか?音楽、ダメなのは?」 「あ。小さいころは歌ってたよ、普通に。幼稚園で歌うやつ。それから、えっと、ウルトラマン、仮面ライダー、ゴレンジャー、オバQ、ハクション大魔王」 「歌ってもらえます?」 「勘弁して」 「すいません」 朝倉君、随分食いついてくる。 バンドなんかやってるから、音楽を楽しめない人間が信じられないんだろうな。 「一番好きだったのは?何ですか?そのころ」 「一番好きなの」 「はい」 「ううんと。えっと。一番か、一番。ああ。なにかな?東村山音頭とか、好きだった」 「ひがっしむらやーまー♪」 カウパーが歌い始めた。 「にーわさーきゃ、たまーこー♪」 今度は、野火さん。 「さやっまちゃーどこーろ、なっさけがあっついー♪」 「そーれ」 「ひがっしむーらやーまよんちょうめ~♪」 「ひがっしむーらやーまよんちょうめ~♪」 志村けんは、僕のヒーローだ。 「そうだそうだ。みーんな歌ってた。あの頃の子供」 「大人もね。カウパー」 「東村山って地名を偶然聞くだけで、誰かが歌い始める」 「そうそう」 「僕だって知ってますよ。リアルタイムじゃないけど。ひーがしむらやーまさんちょうめ~♪」 「おお。朝倉君、さすが」 二番だ。 「ひーがしむらやーまさんちょうめ~♪」 「ちょいとちょっくらちょいとちょいときねて♪」 「いちどはおいでよさんちょうめ♪」 「はい。南さんも」 「いちどはおいでよさんちょうめ♪」 ははは。歌えない。やっぱ。 「やっぱダメですか」 「ははは。ごめんね。朝倉君」 「でも、あれですね。聴いてて大丈夫でした?」 「あ。そういえば。大丈夫だったよ。気持ち悪くない」 「じゃあ。えっと」 「ぎんがーみー♪」 「カウパー。それ、南さん中学生のころのやつ。キン肉マンだよね。歌詞違うけど」 「俺たちは、こうやって歌ってました。ぎんがーみー♪」 はいはい。 「むねーにつけーてる、まーくはりゅうせー♪」 「じまんのじぇっとで、てーきをうーつー♪」 「どうですか?南さん」 「あ。平気だ」 「あ。じゃ、おれおれ。南さん。行くよ。ばんばらばんばばん、ばんばらばんばばん♪」 「あ。カウパー。ゴレンジャー。平気」 「あのね、きゅーたろーはね~♪」 「おばけのきゅーたろーはね♪」 「大丈夫ですか?」 「うん。大丈夫」 そっか。小さいころに歌ってたやつは大丈夫なのかな。 「やせいのうーまーは~♪」 え? 「やせいのうーまーはー♪」 あ。中学校の音楽の授業でやったやつだ。「野生の馬」。 「ごめん。朝倉君。それ、勘弁。まじ、勘弁」 「すいません。わかっててやりました」 「そんな」 「たしかめたかったんで。すいません」 僕は、ビールを飲んだ。 「僕が、音楽ダメな原因。多分だけど。わかってるんだよ」 「話していい内容ですか?」 「うん。大丈夫だよ」 「聞かせてください」 「うん」 あ!と、カウパーが、叫んだ。 「その前に、ちょっとまて。3番やってねえじゃん。東村山音頭。一丁目」 ははは。 「いっちょめいっちょめ、いっちょめいっちょめ、いっちょうめ♪」 わお!
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