5人が本棚に入れています
本棚に追加
/4ページ
とある小国の王が殺害された。
寝室で寝ている間に、心臓をナイフで一突き。悲鳴をあげる暇も無い、あっけない最期であった。
容疑者に挙がったのは、不在証明の無い、双子の王子と王女。
だが、殺害現場に現れた探偵は、迷いもせずに妹王女を指差した。
「王女殿下。犯人は、あなたですね」
即座に王女の顔色がさっと青ざめた。
彼女はしばらくの間、言葉を失い、ぷるぷると唇と拳を震わせていたが。
「な、何を根拠にそんな事を言い出すのです!?」
突如大声を出し、腕を振った。
「わたくしにお父様を殺す理由など、ありません!」
「ありますよ」
探偵は帽子の縁についと触って、自信たっぷりの口上を述べてみせる。
「国王陛下は、自分の気に入らぬ臣下を片端から処罰する、いわば暴君でした。王女殿下、あなたも陛下に讒言をして、日々怒鳴られ殴られていたという。殺意を抱く時間は充分にあったはずです」
「だからって!」
王女は身を乗り出し、華奢な両腕を差し伸ばして、絶対に自分は無実であるといわんばかりに、切々と訴える。
「わたくしにお父様を殺すことができて!? 心臓を一突きなんて、この細腕でできようものですか!」
「できるのですよ、それが」
探偵の、揺るぎない口調が、緊迫した場の空気を打つ。
「眠っている相手目がけ倒れ込み、勢いをつければ、女性の腕力でもナイフは心臓に達しましょう」
最初のコメントを投稿しよう!