ある暴君の末路

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 とある小国の王が殺害された。  寝室で寝ている間に、心臓をナイフで一突き。悲鳴をあげる暇も無い、あっけない最期であった。  容疑者に挙がったのは、不在証明(アリバイ)の無い、双子の王子と王女。  だが、殺害現場に現れた探偵は、迷いもせずに妹王女を指差した。 「王女殿下。犯人は、あなたですね」  即座に王女の顔色がさっと青ざめた。  彼女はしばらくの間、言葉を失い、ぷるぷると唇と拳を震わせていたが。 「な、何を根拠にそんな事を言い出すのです!?」  突如大声を出し、腕を振った。 「わたくしにお父様を殺す理由など、ありません!」 「ありますよ」  探偵は帽子の縁についと触って、自信たっぷりの口上を述べてみせる。 「国王陛下は、自分の気に入らぬ臣下を片端から処罰する、いわば暴君でした。王女殿下、あなたも陛下に讒言(ざんげん)をして、日々怒鳴られ殴られていたという。殺意を抱く時間は充分にあったはずです」 「だからって!」  王女は身を乗り出し、華奢な両腕を差し伸ばして、絶対に自分は無実であるといわんばかりに、切々と訴える。 「わたくしにお父様を殺すことができて!? 心臓を一突きなんて、この細腕でできようものですか!」 「できるのですよ、それが」  探偵の、揺るぎない口調が、緊迫した場の空気を打つ。 「眠っている相手目がけ倒れ込み、勢いをつければ、女性の腕力でもナイフは心臓に達しましょう」
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