不良王に、俺はなる!

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不良王に、俺はなる!

「日本一の不良王に、俺はなる!」  ちょっと待って。僕は思いっきりずっこけた。拳を突き上げたアサトが、突然目の前でそんなことを叫んだからだ。  しかも、某大御所マンガの台詞をモロパクリして。 「俺には不良の才能がある、それを今日から開花させてやろうと思う!」 「え?」 「ガタイが良く、声がでかく、人相も悪い俺だぞ!喧嘩しても多分強いはずだし、何故今までその才能に気づかなかったのか……!」 「いや、ガタイいいのは柔道やってたからじゃん……」 「俺の突き進むロード、見ていてくれよアキト!」 「人の話聞けよオイ!」  彼は宣言するだけ宣言すると、そのまま“いってきます!”と元気よく言って家を出ていった。金髪リーゼント、改造学ランっていったいいつの時代の不良のつもりなんだろう。まあ、間違いなく部屋に散らばってる、十年ちょいくらい前の不良マンガを読み漁った結果なのだろうが。 「……馬鹿なの?」  そもそも不良なら、予鈴の四十分前にはちゃんと学校に到着するような時間に律儀に家を出ていくのはどうなんだろう。いつもの癖が既に抜けていないではないか。  もっと言えば。 「つか、お前の高校、進学校じゃん。不良いんの?見たことないけど?」  地元のどっかに不良はいるかもしれないが、ヤツの学校に不良がいるのを見たことがない。正直、既にスタート地点に立てていないような気がするのは気のせいか。  僕はため息を一つついて、ガタイのいい男子高校生の後を追いかけることにしたのだった。
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