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新しい一歩
気がつくと部屋のベッドにいた。
「えっ?私、死んだはずじゃ……」
部屋を見渡すと久しぶりにみる悠真が座っていた。
「悠真……?」
悠真は私に気づいてほっとした顔をして近寄ってきた。
「お前、心配させるな!これからは、ずっと……俺がそばにいる。陽翔もそんなお前は見たくないはずだ、いつも笑っている澪を好きになったはずだ」
悠真は力強く私を包み込む。こんなに話す悠真は初めてでびっくりして。この世界にさよならをした事も忘れそうになる。
「悠真が私を助けてくれたの……?」
「俺は、卒業してからもずっとお前が心配で見守っていたんだ……」
「えっ?どういう事……?」
「だから、そのままだよ。お前、酔うと決まってあのビルの屋上に立っていただろう?」
「えっ?見られてたの?」
「ああ。だから、何かあったときの為に、命綱とか準備してたんだ!あの日は、いつもと様子が違ったから準備しててよかったよ。あとは、落ちる途中に着地出来る場所があったから下まで落ちなくてすんだんだ」
悠真は、ずっとあの事件から私の事、心配してくれてたんだ……
悠真の気持ちがわかった時、涙が溢れた。
「俺たち、ここから一緒に歩いていかないか……?」
私の止まった時間は、少しずつ動き出した気がした。
あの時の事を知ってる人でなければ、きっと私も前に進む事が出来なかっただろう。
『ありがとう。ずっとそばにいてくれて』
私は、心の中で想いながら、暖かい感情が溢れてくる感覚がしていた。
ベッドの窓から光が差し込んできて、カーテンが風になびかれて揺れている。
あの時に、みんなと楽しかった放課後を思い出した。
私は、そばで見守っていた人がいることも気がつかず、周りが見えてなかった……
「悠真、ありがとう。ずっと見守っててくれて」
陽翔、私達の事、見守っててね。これからは、陽翔に心配かけないように幸せになれるよう頑張るよ。
今なら言えそうな気がする。
『陽翔、私の事、助けてくれてありがとう。これからは、陽翔の分まで生きていくね』
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