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一週間後、思い切って通販で買ったエアロバイクが家に届いた。これなら好きな時にエアコンの効いた部屋で漕げる。最新式だけあってファッショナブルだった。早速リビングルームの隅に運び込み、色々触っていると、ふとあるボタンに目が留まった。
「見えーる機能?」
私は説明書を慎重に読み進めた。
『規定の速度で一定時間漕ぎ続けることで、離れている家族の様子が見える機能』
真一さんは今仕事のはずだ。私はそろそろとエアロバイクに跨ってみた。
「まず名前を入力してっと……。佐藤真一」
画面に設定が表示された。
「負荷レベル六、時速二十キロで一時間?」
私はゆっくりペダルを回転させると、徐々に指示通りの速度まで上げていった。これがかなりきつかった。Tシャツは汗で湿り、太ももがパンパンに張って息も上がった。少しでも速度が落ちれば最初からやり直しなので、歯を食いしばってペダルを漕ぎ続けた。
一時間が経った。途端に画面が切り替わった。そこには、真剣な顔でコンピューターに向かっている真一さんの姿が映っていた。
「本当に見えた!」
さすがに声までは聞こえないが、真一さんは可愛い女子社員から書類を受け取り白い歯を見せていた。
「なによ、にやけちゃって」
その日から私は、真一さん見たさにエアロバイクを漕ぐのが日課となった。
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