水中銃そして蒲焼

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 エイちゃんがもじゃもじゃ頭をポリポリかきながら土間におりてきた。 「宮川に行くけど、行くか」  学校が長い休みになると、俺は親戚のおばちゃんちに遊びに来る。エイちゃんは一つ年上のこっちの友だちだ。兄弟のいない俺にとって兄ちゃんのような存在だ。  エイちゃんちは山の仕事をしている。土間の壁にはいろんな道具がびっしりとぶら下がっている。そこからエイちゃんは水色の水中眼鏡とピストルをでかくしたような青い道具を手に取った。 「なにそれ?」 「これか」  エイちゃんは自慢げにその道具を俺に渡した。ピストルみたいなところは長さ三十センチくらいの木でできていて、先っちょに鉄か何かのパイプと太いゴムが針金でしばりつけられていた。パイプには太さ二ミリくらいの長い矢が通してあって、先がスーッと尖っていた。 「水中銃。俺がつくった」 「へええ。去年はなかったよね」 「あったけど、おまえまだ三年だったからさそわなかった」 「なんで」 「あぶねえからさ」  たしかに、三年が持つにはヤバそうだった。
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