こえ

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ある日私の家に強盗が入った。 その強盗が言うには、私の研究によって世界が終わってしまう可能性があると言う。 確かに私は世界的に有名な科学者であり、今研究している物も世界を一変する可能性のある物だった。 強盗は震えながらも、両手に拳銃を握り私の方に向けている。 恐ろしい時間が流れる。 (この事態をどうにかしたいか?) 頭の中にいきなり強盗の声とは違う重厚な声が聞こえてきた。 このおかしな状況に頭がいかれてしまったかと思ったが、声は勝手に話しかけてくる。 (この男が言っている事は本当の事だ。お前の研究によって世界は破滅する) にわかには信じられない事だが、この声に耳を傾ける事にした。 (アナタは何者だ?どうして今から起こる事が分かるというんだ?) 頭の中の声は悠然と答える。 (私は何者でも無い。だが、お前たち人間は神と呼んだり、悪魔と言ったりもするさ) (それで私にどうして欲しいんだ?) 私は頭の中の何者かに尋ねた。 (選ぶのはお前たちさ。なんならこれから起こる事を見せてもいい) 私はこの声に従って今から起こるという世界の姿を見せてもらう事にした。 (先ずはお前が死んだ場合の世界だ) そして頭の中にイメージが送られてきた。そこはゆっくりと雲が流れ、穏やかな景色が広がっている。明らかに平和な世界で、墓石に花を手向ける者の姿が見えた。 (そしてコッチがお前が生き残り研究を続けた世界) 次に見せられたイメージは目を背けたくなるようなほど荒廃し、人々が食べ物を取り合い、殺し合いを続ける悲惨な光景だった。 私は決意した。 そっと背中に手を回し、上着とズボンの間に隠していた銃を強盗に向けて発砲した。 タマは腹部に当たり、強盗が倒れる。その姿を見ながら私は自らの頭に拳銃を撃ち込んだ。 (どうしてこんな結末を選んだ?) 頭の中の声が問い掛けた。 (私が死んでも生きていても大事な家族は守れない。平和な世界で見た墓石の名は妻と可愛い娘の名前だった。私が死んだ後にこの強盗が私の家族に何をするか分からない。だから撃った。それに研究を続けた世界でも妻や娘は逃げ回って決して幸せとは言えない状態だった。そんな世界を生きて見続ける事は出来ない…) そして私の世界は幕を閉じた。 ➖➖➖数年後。 ある墓石に刑期を終えた例の強盗がこの霊園を管理する牧師と共に立っていた。 腹部に当たったタマは致命傷を辛うじて逸れていたのだ。 「この二人は何故亡くなったのですか?」 「交通事故に遭ってしまってね…」 「そうですか…」 そう言いながら持ってきた花を供えて強盗はその場を離れた。 (そういえば…結局あの声は何だったんだろう…) そう思った瞬間、いやらしく笑う声が頭の中に響いたような気がした。
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