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「うぅ……」
映画を観た帰り道、案の定ミズキは泣いていた。
何が良かったんだ、あんなもの。感泣かよ、一生泣いてろ。
「泣くなよ…そんなに良かったか?」
自分の口から出てくるのは、気持ちとは裏腹なそんな言葉。
「っ、うん…っ!どんなに言っていても、やっぱり主人公はあの子が好きだったんだね…!!」
バカバカしい。
「そうだな…ま、ハッピーエンドみたいで良かったな。ほら、もう泣くな」
それでも出てくるのは嘘。
「っ…うんっ…!!ありがとう次春くん…!!」
俺の口から出てくるのは、嘘ばかり。
「どうしよう次春くん…」
ミズキのサンダルが壊れた。
二人で出かけようと迎えに来たミズキのサンダルの紐が切れ、ミズキは俺の家の玄関先から動けなくなった。
俺の靴はあるが、ミズキの服装にもサイズも、合うわけはない。
「ごめんね…ごめんね次春くん…せっかく一緒に出掛けるところだったのに…」
泣きそうなミズキ。なかなかいい表情だ。
さて、困った顔は見られたが…
面倒。
何かしてやるのなんかゴメンだ。
「俺の家の前で良かったな。数歩なら行けるか?家の中入り直せ」
「え、でも…」
「家にいるしかないだろ。それとも俺のもう一足で、もう帰るか?」
俺は笑って言ってやる。
首を横に振るミズキ。しかしすぐには動かない。
また困っているのだろう。
それもそうだ。
ほら、もっと困れよミズキ…
そしてしばらく考えたミズキは言った。
「…ごめんね…ありがとう、次春くん…おじゃまします…」
泣かないのかよ、少し嬉しそうな顔しやがって…
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