ひねくれた気持ちの先に

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「…ミズキ…」  やっと出てきた俺の言葉はそれだった。それもなぜか困った顔をしたままで… 「やっぱり…。ごめんね、本当にごめんなさい…私、もう次春くんに迷惑かけないよ…さよならする…」  俺は今、そんなにわかりやすい表情をしているのか?見てすぐに、その答えが肯定だとわかるくらいに… 「ごめんね…ごめんね…」  泣き続けるミズキ。なぜか言葉が出ない俺。  当然だ。好きでもないのに付き合っていたのがバレたのだから、去っていくに決まっている。  それでも俺は固まったまま。  どんな表情をしているのか、自分にもわからない。  きっと、決断力の無いコイツのことだ、こんなにすぐに言えるという事は、ずっと悩んでいたに違いない。  俺の知らないところで… 「いつもいつも、決めるの遅くてごめんね…それでも私を待ってくれて、本当に嬉しかった…」  俺はただ、お前の困った顔が見たくて… 「っ…今まで、ありがとう次春くん…次春くんに、本当に好きな人、できるといいね…!!」  また悩むと俺を困らせると考えたのか、ミズキは、俺に向かって泣き顔のまま笑ってみせ、 「さよなら」 そう言って去っていった。  …もっと、泣いた顔を見るはずだった……  あっさり告白してきて、別れ際も悩んだ跡も見せずに…  …違う…  付き合うまでも、コイツは悩んでいたに違いない。  引っ込み思案なアイツのことだ、俺に告白してくるにも時間が掛かったに決まっている。  いつの間にか、俺はこんなに分かるようになるまでアイツと…  それなのにアイツはずっと、俺を見ながら悩んで…  ミズキを忘れられなくなった。  あんな変な気まぐれ、起こさなければよかった。  いつもいつも中途半端な困った顔をしやがって… そのくせ、俺が合わせるとあんな嬉しそうな顔して…  …俺はアイツとの思い出を忘れられないまま、この先も一人で生きていく。  誰とも付き合わず、嘘をついたままで…
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