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俺は嘘を付く。
付き続ける。
「次春くん、映画、何を観に行こうか…?」
「お前の好きなものでいいよ」
にっこり笑う。
「え、私…?えっとね…」
コイツは決断力がまるで無い。物事を決めるのに時間がかかる。
ほら、もっと困れ…俺は意見なんかしてやらない。
「…あ、あのね…恋愛ものなんだけど…いい…?」
ミズキがさんざん悩んで出した答えだ。
まあ、困った表情は見られた。あとは勝手にさせておくだけ。
「恋愛か…俺も好きだから、そうするか」
嘘。
他人の恋愛なんて、全くもって興味は無い。ましてや作られた嘘の恋愛なんか尚更。
「ありがとう…!!次春くん、私と趣味が合って嬉しい…!」
喜ぶミズキを見て思う。
単純なやつ…
コイツは一応俺の彼女。
なぜ一応なのかというと、率直に言って、別に俺はこんなやつをあまり好きじゃないからだ。
バイト先の同期なだけだったが、ある時からやたらと俺に絡もうとしてきた。
「次春くん…好きな人、いますか…?その…彼女さん、とか…」
何だコイツ。おどおどしながらそんなことを聞いて来るなんて。
でも俺は笑顔を崩さない。
「いないよ。なんで?」
「あの、その…彼女さんいないなら、えっと…おしゃべりしても、いいですか…?」
訳がわからない。なぜ俺と?
いないなら、の意味もわからない。
内心は面倒。受け流すつもりで相手をする。
「いいよ?」
「え〜と…あ、じゃあ…」
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