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第1話 ポメラニアン転移直後
目の前には、大人しそうな女の子がいた。
十歳になるかそこらの歳の子だ。
長い黒髪に赤い瞳、こっち興味を持っているからなのか、くりくりまんまるのお目目。
女の子は目をきらきらさせて、こっちを見ている。
僕は、その子から差し出された手をペロペロ。
女の子ははしゃいだ声をあげた。
「かわいいっ、なんてかわいい生き物なんでしょうっ。迷子ですか? おうちに連れてってあげますね」
僕はポメラニアンのもっふ。
飼い主のみっちゃんとお散歩してたはずなのに、気が付いたら知らない場所にいたんだ。
僕は心細くなって、ふるふる震えるしかない。
でも、僕を見つけた女の子が、僕を撫で撫でして抱き上げた。どうやらお家に連れて帰ってくれるらしい。
知らない場所で一人ぼっちでいるのは寂しかった。
でも、もう一人でいなくても良いみたい。
だから僕は「くぅーん」と泣いて、女の子の顔をペロッとなめた。
女の子は「えへへっ」と笑って。「お腹空いてるんですか? 大丈夫ですよ、おうちに帰ったらすぐにご飯をあげますからね」と言った。
そうじゃないよ、と言いたかったけど、人間と犬って言葉が通じないから。
どうやらこの女の子は、犬を飼った事が無い人みたいだ。
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