針を飲む

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「婆ちゃん久しぶり!調子はどうだい?」 「あら、正人、久しぶりだね〜。 わざわざ遠い所からすまないね。 最近は具合も良いんだよ。 うん、ありがとう。」  抗がん剤治療のせいか腕や指先は骨と皮だけで、顔も随分やつれてしまっていた。 しかし治療を続けていたのも祖父が生きていた間だけで、ここ最近は伯父と伯母の意向で生理食塩水しか点滴していないらしい。 祖父も亡くなってしまったし、これ以上本人に辛い治療を強いてまで延命する事が果たして正しいのか悩んだ結果なのだろう。 抗がん剤の副作用から開放され一時的に体調が良くなっていたせいか、昔と変らない優しい笑顔で俺を迎え入れてくれた。 それから俺の近況報告や世間話をしている内に、あっと言う間に時間は過ぎていった。 「じゃあ、そろそろ帰るね。 婆ちゃん、あんまり無理しないようにね。」 「そうだね。 早く元気になってお爺ちゃんを安心させてあげないと。 それにあの人、1人じゃ家事も何もできないから逆にこっちが心配だし。」 「…うん、そうだね。 早く病気治して、爺ちゃんと一緒に動物園でも行こう!」 「うん、うん。 それにしてもあの人本当に心配性だから、昨日なんて面会時間過ぎてるのにわざわざ来て私の足をずっと擦っていてくれたんだよ。」 「えっ!? あっ、ああ、そうなんだ…。」 祖父が亡くなったのは1週間程前。 昨日この病院に来れる筈がない。 「珍しく何も言わずにそのままちょっと居て帰っていったけど。」 「…うん…そっか。 本当に早く元気にならんとね。」 「そうだね。 正人も身体には気を付けて、向こうでも元気でやるんだよ。」
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