ワッフルと春風

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好きだとも付き合おうとも言われなかったし、言わなかった。 なんなら連絡先すら交換していなかったけれど、退勤後に化粧を直して駐車場に行けば、グレーの車の運転席で大垣くんが待っていた。 週末会わないことも特段気にならなかった。ひとりの時間を長めに必要とする自分には、むしろちょうどいい頻度だった。 年齢だけはさりげなく確認した。大垣くんは24歳だった。 「若いね。わたし31だよ」 向かい合ったドトールのカフェテーブルで自嘲的に笑ってみせると、彼は一瞬黙った。引かれたのかと思いきや、 「……だから、なおさらいいって言うか」 と、普段よどみなく喋る彼にしては珍しくぼそぼそと言った。 3日に一度は、車はラブホテルの駐車場に滑りこんだ。 わたしとさほど身長の変わらない大垣くんの体には健康的な脂肪と筋肉がはりつめていて、まだ若いくせにちょっとお腹が出ているのがかわいかった。 それを口にすると、「うるさい」と噛みつくようなキスを返された。
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