ワッフルと春風

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抹茶味のワッフルをひとつ胃に落として、わたしは作業に戻った。 小さなげっぷをこらえながらキーボードを叩き、スリープになっていたPCを起動させる。 わたしに入力されるのを待つ用紙の束が、デスクの右側に山積みになっている。 ワッフルは、今日付けで退職するスタッフからのものだ。代表でセンター長に手渡され、四十代の総務の女性社員がひとりひとりに配っていた。 60人もいる職場なのに、どうしてマネケンのワッフルなんて配るのだろう。 いったいいくらかけたのだろう。 ヨックモックのシガールか新宿高野のフルーツチョコレートで充分じゃないか。後の人が辞めるときのハードルを上げないでほしい。 だいたい、退職する人が職場にお菓子を渡す文化ってなんなんだ。誰が、どこが発祥なんだ。余計なことしやがって。 心の中でぶつくさ言いながらも、午後の空腹に耐えきれず、わたしはその砂糖と油の(かたまり)を口に運んでしまった。
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