猫と綺羅星

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 太一は、腰を突き出すようにしてソファの上に四つん這いにさせられ、昴さんに犯されていた。円加さんはその下で仰向けに寝転がり、昴さんに突かれる太一をじっと見上げている。両手首が縛られ(ひじ)で上半身を支えているため、円加さんの顔が鼻先を(かす)めるほどに近い。 「どうしちゃったの太一。中、すごい震えてる」  突かれるたびにポタポタと白い熱が(したた)り、円加さんの腹を汚していく。上だけ服を脱いだ円加さんは、美しく引き締まった腹筋にかかる白濁を(ぬぐ)うこともせず、何度も絶頂を迎える太一を冷ややかに見ていた。  嫌なのに、我慢したいのに、うまく体に力が入らない。円加さんに触れないよう手足を踏ん張ると、下半身にずぶずぶと出し入れされる熱を無防備に感じてしまい、溢れ出る快感に耐えることができない。ぶるぶると震える体を見て、円加さんが(あざけ)るように笑った。   「”渉”とすんのは、そんなに気持ちいいかよ。ったく、人の上に遠慮なく出しやがって」  ・・・うるさい。  円加さんの眼前ではしたなく(あえ)ぎそうになるのをぐっと(こら)え、涙に濡れた瞳で(にら)みつける。美しい切れ長の瞳がピクリと引きつった。 「円加。あんまりいじめないであげてよ。・・・ね、太一。もっと声聞かせて」 「い、やだっあ・・・んんっ」  肌と肌がぶつかる音。頭がクラクラしてくる。 「ほんっとくだらねー。なあ太一、自分がどれだけ(みじ)めかわかってるか。好きな男は女しか抱けないから、別の男を代わりにして抱かれてる。自覚してんだろ?それなのに別れられなくて、みっともなくしがみついちゃって。マジで何がしてえんだよ」  ・・・うるさい。うるさい。黙れ。  円加さんが鼻を鳴らした。 「円加。それ以上言うと俺が怒るよ」 「俺なんかにこんな醜態(しゅうたい)さらしてまで、プライドねえのかよ」  ・・・うるさい。頼むからもう言うな。 「わかって、るよ。でも・・・みっともなくても、好きで悪いかよ」  円加さんの目の淵から雫が落ちた。それが、太一がこぼした涙だと気づくのに時間がかかった。 「知ってるよ、自分がどれだけ矛盾してるかなんて。苦しいし、離れたいっていつも思ってる。・・・なのに、誰に抱かれても、これが渉だったらって考えちゃうんだよ」 「・・・あいつの何がそんなにいいんだよ。ただのクズだろ」 「知るかよ、んなも・・・っあ!」  昴さんの熱が、太一の一番奥にそっと触れた。そのまま優しくかき回される。ひたすら(あふ)れ出るくぐもった水音が、内側から太一の鼓膜を刺激した。 「そんなに好きなの、渉が」 「んああっ・・・!はぁ、・・・き、だ。渉が、好きっ僕は、わ、たるっが・・・ぁあっ待っ」      昴さんの高ぶりが何度も根元まで突き刺さる。もう声も我慢できなくて、円加さんの瞳を見つめながら喘ぎ続けた。うわ言のように何度も好きだと言いながら。  ぐちゃぐちゃでひどい顔をしていたと思う。円加さんは途中から、どこかぼうっとした顔をしていた。我を忘れるほどに何度も交わりあい、記憶が溶けていく。最後はもう踏ん張ることもできなくて、何度目かの絶頂の後、円加さんの上に倒れ込んだ。太ももに、円加さんの硬くなった熱を感じて、少し驚く。張り詰めていた糸が切れたように、ゆっくりと目が閉じていく。薄れゆく意識の中で、頭を優しく撫でられた気がした。 「誰かに一途に思われるって、どういう気分なんだろうな。・・・いいなあ、渉は、あんたがいて」  誰の声なのか、夢か現か。何も考えられないまま、太一は深い眠りに落ちた。    
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