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円加さんにマンションの前まで送ってもらって、太一はようやく一息ついた。まだ頭がぼーっとしている。口の中に、生々しい感触が残っていた。
太一が円加さんのモノを口に含むと、それだけで円加さんは息を荒らげた。頬の内側で擦るように顔を動かし、舌も使って全体を刺激していく。口の中でどんどん硬くなる熱に、太一は夢中でしゃぶりついた。最後は太一の頭を抱え、喉の奥に何度も欲を吐き出された。見つめ合いながら射精され、太一は注がれる欲を飲み干していく。自分の下半身も抑えようがないくらいに疼いていた。
はあー・・・思い出すだけで、永遠に抜けそう。
エントランスに入りながら、円加さんの顔を頭の中でしつこいくらいに反芻する。夢見ごごちのまま郵便受けを開くと、中に小包が入っていた。
・・・なんだろう、これ。ネットで何か、頼んでたっけ。
取り出して裏を見てみたが、差出人が書いていないどころか、切手すら貼っておらずゾッとする。送り主が直接、ここに投函したということだった。そんなことをする人物の心当たりなんて、一人しかいない。
・・・渉、来たんだ。
ズキズキと頭が痛む。部屋に入って小包を開けると、中には手紙と写真、映画のチケットが入っていた。写真は昔、二人で遊んだ時に撮ったものだった。太一と渉が笑顔で肩を組んでいる。手紙を開けてみた。
『太一、今まで傷つけてごめん。
もっと早めにお前の悩みに向き合ってやれたらよかった。別れようって言われて、人生で初めてこんなに落ち込んでる。後悔しかないよ。
これからはもっとお前のこと大事にしてみせる。なあ、俺はまだお前と別れたと思ってない。このまま俺にチャンスもくれないまま、円加と付き合うなんて許さない。
もう一回会って話しをしよう。二人きりで。お前が今何を考えていようと、俺たちは絶対ちゃんと話し合うべきなんだ。太一が前に見たいって言っていた映画のチケットをとった。今週末、観に行こう。断るなよ。お前にそんな権利はないから。絶対に来い。太一が俺と区切りをつけたいと思っていたとしても、このまま会わずに自然消滅なんて、そんなことはさせない。絶対会いに来い』
震える手で、手紙を閉じる。胃がキリキリと痛い。ここまでこじれるとは思わなかった。だんだんと、取り返しのつかない方向へ進んでいる気がする。
・・・どうしよう。
誰かに相談するか。でも誰に?円加さんには言いたくない。なら昴さん?いや、それもダメだ。きっと円加さんは嫌だろうから。
・・・とにかく、二人きりで会うのはまずい。映画は断ろう。それから、どうしよう。どうすれば諦めてもらえるんだ・・・?
迷って、太一は大学の友人数名に連絡をとった。事情を伝えると、大学内で渉と話し合う場をセッティングしてくれるらしい。
『状況はわかったけど、渉、結構おかしくなってねえか。気をつけろよ』
同席すると言ってくれた友人が、不安げな言葉を漏らす。うん、僕もそう思うよ。
深呼吸をして、覚悟を決めた。久しぶりに、渉とのトーク画面を開く。既読をつけた瞬間、渉から電話がかかってくる。頭が真っ白になった。
震える手で通話を押すと、切羽詰まった渉の声が聞こえてきた。
『太一っ!!!よかった、出てもらえて』
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