猫と綺羅星

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 (にぎ)やかな音楽が鳴り響くホール。会場全体が楽しげに揺れていた。二階から壁を(へだ)て、熱気をどこか遠くに感じながら、VIPルームの室内で、太一はくぐもった(うめ)き声をあげていた。  渉は拘束され身動きの取れない太一に(またが)りながら、息を荒らげ、太一の前を(しご)いている。下着を膝下までずり下ろされ、下半身がローションでベトベトだった。 「ちょっと、硬くなってきたんじゃないか」  根元を強く握り込まれ、痛みで息が()れる。 「っは、()さそうだな」 「ちげえ、っての」  さっきから、腰のあたりに硬いものが当たっている。  ・・・()くなってんのは、そっちだろうが  渉は再びローションを取り出し、太一の尻にドロドロと垂らした。 「合宿のことがあってからさ、もう後悔したくないと思って、男同士のやり方を調べたんだよ。絶対、円加より気持ちよくさせてやるからな」  渉が指にゴムをつけ、太一の後ろに差し込んだ。 「お、ま・・・あっ!」  遠慮のない動き。太い指が中で(うごめ)いて、ぐりぐりと無理やり奥をこじ開けようとする。痛みで額に冷や汗が浮かび、指先が冷たく湿っていく。目に涙が溜まった。 「も、やめ・・・抜、け」 「何言ってんだよ。こっからだろ」  室内に響く卑猥な水音に興奮したのか、指の動きは次第に激しくなっていった。汗の浮かぶ太一の(うなじ)に、渉が舌を()わせる。全身を鳥肌が包んだ。そのまま吸いつかれ、耳元に熱い息がかかる。 「い、やだ・・・んんっあ」 「いい声出すじゃん。な、そろそろOKだよな」  渉が中から指を引き抜いた。全身で息をする太一を見下ろし、硬く膨張した熱を取り出す。 「っざけ、な・・・」  渉が熱に浮かされた目をしながら、太一の尻に手をかける。入り口を開き、先端を押し当てた。 「待っ・・・嫌、だ」 「俺にもお前の声、聞かせてくれよ」  渉が力を込める。メリメリと先端が入り口を押し開き、激痛で体が痙攣(けいれん)した。息が吸えない。肌が(あわ)立ち、(のど)の奥から悲鳴のような吐息が()れた。 「はは、そんなに()いか、太一。でもキツすぎてこれ以上挿入(はい)らないから、ちょっと力を抜いてくれ」  ・・・全然、()くねえ、よ。逆だバカ  ゼエゼエと荒い息を吐く太一に、渉が愛おしそうな声をかける。 「男とすんのは、いいもんだな・・・はぁ、女より締まってて、や、べ」  御構い無しに力を入れてくる渉。鋭い痛みに気絶しかけた。 「勘違い、す、んな・・・っん、あ、それ以上は、・・・めろ」  渉は、無理やり奥までこようと力任せに腰を押し込める。入り口がビキビキとひきつれて、太一はたまらず悲鳴をあげた。まつ毛が涙で(にじ)む。 「あ、れ・・・?太一、お前、血が・・・」  渉の動きがピタリと止まった。朦朧(もうろう)とする意識の中で、渉の慌てふためいた声が聞こえる。その時、VIPルームのドアがガンガンと叩かれた。 「渉・・・?!ここにいるの、ねえ、返事して!!」  聞き覚えのある、女性の声だった。  千・・・紗・・・? 「なんで、血が・・・」  そんな声など聞こえていないかのように、渉が動揺しきった様子で(つぶや)いた。 「たりめ、だろ・・・そんな、中途半端に(ほぐ)されただけで、挿れられても、なんも感じね、よ・・・」  太一はぐったりとして、身も心も疲れ果てていた。けれど、なんとか力を振り絞って、口を開く。 「な、渉、はさ・・・僕が簡単に心変わりしたって言ったけど、誤解だよ」  渉は呆然としたままで、太一の話を聞いているのかわからない。それでも、言わなければと思った。 「簡単に、心変わりなんかできるわけねえだろ。当然だよ。渉のこと、すっげえ好きだったんだから。人生で初めてなんだよ。あんなに人を好きになったのは。でも」  太一の瞳から、涙が(こぼ)れる。 「・・・たぶん、初めて大げんかしたあの日、僕の気持ちは、もう変わってたんだ。渉を好きだったけど、好きって気持ちから愛情が消えてた。残っていたのは、ただの執着だ」 「なんだよ、それ」  渉の目が見開かれる。苦しげに口元が震えていた。 「あん時、もう僕らの関係は終わってた。そのことに、ずっと気がついていなかっただけだ。そのまま、ずるずると続けちまった」  渉が、拳を強く握りこんだ。 「なあ、もう僕たち、別れよう・・・?」  ポタリと雫が背中に落ちた。同時に、ドアの外が騒がしくなる。ガチャガチャと慌ただしい音がして、勢いよく扉が開かれた。 「太一くん!!」  血相を変えた昴さんが部屋に飛び込んできた。そのまま、太一は意識を失った。    
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