猫と綺羅星

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「痛かったでしょ。モデルなのに、体に傷作らせるようなことして、ごめん」 「大したこと無い。太一に比べたら」  真っ白な顔で声を震わせながら、円加さんは拳を強く握りこんだ。包帯に(にじ)んだ血がジワリと広がっていく。太一は慌てた。 「いや、そんな・・・僕は大丈夫だから。渉もきっと反省してるだろうし」  意識すると、まだ後ろがズキズキと痛む。座っているだけでじっとりと冷や汗が浮かんだ。なんとか(こら)えつつ、いつもの表情を取り繕う。  円加さんが太一の頬を両手で挟み、唇を押し付ける。そのまま強く吸い付かれ、一瞬息ができなくなった。 「俺の前であいつをかばうな」  再び深い口づけをされる。後頭部をがっちりと固定され、強く()りつけるように角度を変え、何度も噛みつくように。  (にら)むように鋭く細められた瞳。独占欲を()り込むような荒々しい口づけ。がむしゃらなほどの性急さが、どれほど怒りと苛立ちを抱えているのかを伝えていた。受け止めるだけで精一杯の太一は、円加さんの肩を握り込んで、なんとか自分を保とうと必死だった。  ようやく唇が離れる。息が上がり、太一の瞳はとろんと崩れた。わずかに開いた口元に指を添わせると、円加さんは最後に長めのキスをした。じゅう、と強く(すす)られ、唇がじんと(しび)れた。 「あいつ、一生許さねえ。・・・太一、退院したら全身、消毒してやるから」  円加さんは舌打ちし、太一の肩におでこをのせる。 「消毒って」   あやすように頭を撫でると、顔を上げた円加さんが苦しそうに太一を(にら)みつけた。そのまま背中を支えられ、ゆっくりとベッドに押し倒される。 「教えろ。渉に触られたとこ全部」  円加さんの手が、太一の心臓の真上に押し当てられた。 「・・・ほんとに、大丈夫だから」 「言わないと、今ここで全身舐める」  顔に熱が集まる。見下ろされていることに耐えられなくなって、思わず腕で視界を(おお)った。心臓に置かれた手が、太一に触れたまま、するすると真下に(すべ)っていく。鳩尾(みぞおち)、ヘソ、そして下腹部へ。太一はぎゅっと目を(つむ)る。 「っ・・・!前を」  円加さんの動きが止まった。薄眼を開けると、鋭く艶のある瞳がまっすぐこちらに向けられている。 「前を、(しご)かれて。・・・後ろは、少し(いじ)られた。でもそっちはまだ痛いからあの」  太一が話し終える前に、円加さんにズボンをずり下ろされた。 「うっあ・・・ちょっとっ」 「わかった。そっちは後で、じっくり清めてやる」  片脚を持ち上げられ、円加さんががっちりとホールドする。もう片方の手がかすかに反応を見せた太一のそこを、手のひらを滑らすようにして下から撫で付ける。そのまま円加さんが顔を寄せ、玉の部分から舌を()わせ始めた。  長い髪が太ももをくすぐり、一気に気恥ずかしさがこみ上げる。 「っど、かさん・・・っ!ここ、どこだと思って」  声を潜めて怒鳴るけれど、返事をしてもらえなかった。しゃぶるように口に含まれ、唾液の溜まった舌全体を丁寧に押し当てていく。感触を上書きするように容赦(ようしゃ)なく、もういいと言ってもやめてくれなかった。声を押し殺しながらも、限界がきて、円加さんの口に出してしまった。一度射精をしても(くわ)えられ続け、そのまま二度、三度、湧き上がる熱を、(のど)の奥に放っていく。  気がつくと後ろの痛みなど忘れて、心地よい気怠(けだる)さに身を委ねていた。全てを飲み干した円加さんは、口元を(ぬぐ)うと、満足そうに髪をかきあげる。その顔を見て、渉にされたこととか、自分が感じている恥ずかしさとか、ストレスとか、全てがどうでもよく思えた。 「よし」  鼻を鳴らし、太一の服を元に戻すと、円加さんはベッド脇の椅子に座りなおした。 「・・・そういえばさ、千紗が来てたんだ。クラブに」  ようやく呼吸が落ち着くと、太一はふと、密かに気になっていたことを話してみた。
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