Liar~ライアー~

1/7
72人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ
 新しい環境には、正直まだ完全に慣れたとは言えない。  何せ大学卒業と同時に入社して以来、ずっと今まで同じ会社の同じ部署で十一年間過ごして来たんだからな。『三十三歳の新人』として、もう俺には持てる力を出し切って突っ走るしか生きる道はない。  自分とは縁がなかった筈の権力ゲームに、いつの間にか俺は巻き込まれていた。負けて初めて、俺は自分もゲームの参加者として数えられていたことを知ったんだ。  なんて間抜けな。  住み慣れた東京を離れて、偶然の巡り合わせによって仙台へ拠点を移した。声を掛けてくれた人が居たんだ。  まだ俺はやれる。大丈夫、だ。  それでも新たな同僚となるメンバーには、案外早く溶け込むことができた、と思う。  新しい職場は、新加入の人間が馴染みやすいところだと感じた。転勤での入れ替わりの多い土地柄だというのは大きいのだろう。  あとはどうにか戦力としても受け入れられて、この場の欠かせないピースになりたい、と俺は日々足搔(あが)いていた。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!