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「嘘吐き」
似合わない薄ら笑いを浮かべて淡々と冷たい言葉を並べる恋人に、俺も声を荒げることなく告げる。
「……なんでわたしが嘘なんて吐かなきゃならないんですか? あなたって、随分と自信過剰なんですね」
平静を装った声で、彼女の口から紡がれる言葉。
「自分は誰もに好かれて当然だとでも思ってるなら、ちょっと改めた方がいいんじゃないですか?」
「だったら、もっとはっきり言ってみてくれよ。俺の目を見て、あんたなんか大嫌いだって」
そうしたら、俺も信じるしかないかもしれない。今のお前の台詞が本心だったのなら、それくらい平気なはずだよな?
これからはもう、こんな風にわざわざお膳立てでもしない限りは会うこともない。同僚だからって、毎日嫌でも仕方なく顔を合わせる必要なんかなくなる。今までみたいには。
「最後に思いっきり全部、俺にぶつけて行けよ。今まで好きじゃなかったのに我慢して付き合ってくれてたんなら、言いたいことも山ほどあるんだろ?」
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