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「そばにいるねこは、そばにいるしごとで、はじめてかんしゃされました」 「そ、そうか」 「そばにいるねこは、そばにいるしごとはいらないといわれて、くーりんぐおふされてきました。でも、そばにいるしごとがいらなくても、そばにいるねこは、そばにいるしごとしかできないねこなのです」  俺はなんだか胸が切なくなってしまった。なんの取り得もなくて、彼女にも見捨てられるダメな奴なんだと沈んでいた、さっきまでの自分を見ている気がしたんだ。 「そんなことで落ちこむなよ。俺はお前がそばに居て、良かったよ。本当だ」  もうちょっと気の利いた励ましが言えたら良かったのにな。そう思ったけど、俺も気の利いた奴じゃないからこれがせいいっぱいだ。その代わりに腕を伸ばして、そばにいるねこの冷たいボディに抱きついた。ちょっと恥ずかしいけれど、さっきはそばにいるねこがしてくれたから、お返しだ。  俺は体を離すと、笑って照れをごまかしながらそばにいるねこを見上げた。あいかわらずの無表情だけど、初めて見た時よりずい分可愛く思えていた。  その時、再びスマホが鳴った。見ると、ナツからメッセージだ。今から家に行ってもいい? と書いてある。もちろん、ダメなわけがない。そうだ、彼女にもそばにいるねこを見てもらおう。きっと可愛いと言って喜ぶだろうし、三人でくっついて、料理を作ったりご飯を食べたりするのも楽しいな。 「なあ、そばにいるねこ。これから彼女が家に来てくれるって。お前も一緒に……」  俺が顔を上げると、そこには誰も居なかった。 「そばにいるねこ?」  辺りを見回す。  そんな。  まさか、もう帰ってしまったのか?
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