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ひとりで甘ったるいコーヒーを飲みつつ、背中から離れないそばにいるねこを横目でうかがった。真っ白なツルツルのボディ、小さくてつぶらな瞳、なにを考えているのかさっぱりわからない無表情。ホント、変な奴。
俺は目的もなくブラブラと埠頭を歩き回った。じっとしていたら寒いし、猫ロボットに背中にくっついて立ってられるのも恥ずかしいし。まあ、俺が歩いていても、そばにいるねこはそばにくっついて来て離れないんだけどさ。
「お前さ……今までも依頼があったら、こうして誰かにくっついてたの?」
「ねこはそばにいるねこです。いちどそばにきたら、もうはなれません」
「じゃあ、お前は『俺のそばにいるねこ』なんだ」
「はい。ねこはあなたのそばにいるねこです」
そう言われて、俺はちょっぴり嬉しくなってしまった。
彼女にフラれたばかりだからなのか? でも、やっぱりいくら温かくても物言わぬ缶コーヒーより、冷たくても話ができる奴が居てくれたら嬉しいじゃないか。あ、冷たいってのはボディのことで、心じゃないぞ。ロボットに心があるのか知らんが。
「お前にはさ、別に感情があるわけじゃないんだよな? 人工知能がプログラムされてるんだろ?」
立ち止まって後ろを振り返ると、そばにいるねこも歩みを止めた。
「そばにいるねこはねこです。えーあいではありません」
おや? 少しムッとしているように見える。俺の勘違いかな?
「そっか。ま、どっちでもいいよ。お前がそばにいるの、そんなにイヤじゃない気がするし」
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