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 ナツが俺をフッたのは、てっきり愛想を尽かしたんだと思っていた。俺はなにもかも冴えないし、嫌われても仕方ないとあきらめていたんだ。  ところが、そうではなかったらしい。むしろナツは俺の良い所を認めてくれていたのに、俺が卑屈な態度を取るのが腹立たしかったんだそうだ。  自分を卑下するのは止めて欲しい、つまらない男だと思っていたら四年も一緒にいない、自分を否定するのは、あなたを好きな私のことも否定してるってことなんだよ――思いもしなかった言葉を次々ともらって、俺はビックリしてしまった。涙声になるナツに平謝りして、もう二度と卑屈にはならないと誓った。彼女はこれからも、俺の彼女でいてくれると約束してくれた。  ちなみにナツは「ユウヤがハゲても私は気にしないからね」とも言ってくれた。それはありがたいけれど……俺はちょっぴり傷ついた。まだハゲるって決まったわけじゃないし、今は言わなくても良かったんじゃないかな、うん。  通話を終え、俺はその場で飛び上がりたいくらいに嬉しくなってしまった。  やった、やった! 良かったぁーっ!  少し前まで最悪な気分だったのに、まるでこの世の春が来たみたいだ。どれだけ真冬の寒風が襲ってこようがへっちゃらだぜ。いや、風がツラくないのはそばにいるねこが立ってくれているおかげか。 「やったぞ、そばにいるねこ! 別れた彼女が戻って来てくれるってさ! 俺はひとりじゃないんだ!」  子供みたいにはしゃぐ俺に、そばにいるねこは言った。 「では、そばにいるねこのしごとはおしまいです。あなたのそばをはなれます」 「えっ……」
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