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 驚いて動きを止めた俺に、そばにいるねこは続けた。 「そばにいるねこは、ひとりでいるあなたのそばにいるのがしごとです。あなたがひとりじゃなくなれば、そばにいるねこはかえります」 「そんな……お前、さっき一度そばに来たら離れないって、自分で言ってただろ?」 「あなたがひとりでいるあいだは、そばをはなれません。そばにいるねこへのいらいは『かのじょとなかなおりするまで、そばにいてほしい』でした」  そうだったのか……  ということは、タケルは初めから俺とナツが別れるはずないって、そう思っていたのか? 「だからって、そんなに急に帰ることないじゃんか」  俺はなにを言っているんだろう。こんな変な猫ロボットに始終くっついていられたら困るだけなのに。会社に連れて行けるわけないし。  そばにいるねこは不思議そうに首を傾げた。 「いままでのにんげんは、みんな、そばにいるねこをいやがりました。ごはんも、といれも、ねるときも、そばにいたらめいわくだと。そばにいるねこは、なんどもくーりんぐおふされてしまいました」 「お前、俺が最初の客じゃなかったのかよ! なんかちょっと裏切られた気分だわ! いやまあ確かに、トイレにまでゼロ距離でくっついて来られるのはちょっとなぁ……」  俺がそばにいるねこのつぶらな瞳を見上げると、そばにいるねこは少し悲しげな顔をしているように見えた。やべ、傷つけたか? 「でもさ、俺はお前がそばに居てくれて、なんていうかその、嬉しかったよ。お前はそばに居るのが仕事だから、仕事として来てくれただけなんだろうけど、俺は来てくれたのがお前で良かったなって、うん、そう思ってるよ。ありがとな」  俺がそう言うと、そばにいるねこは不意に両手で顔を隠すようなポーズを取った。 「フミャー!」  鳴いた!?  え、もしかして、これは嬉し泣きなのか!?
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