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押し入れに隠れている玲也と笑梨の両親の目が合った。
「どうして・・・。 一体何があったの・・・?」
どうして笑梨が庇うのか理解できていないようだ。 玲也は観念して押し入れから出た。
「サンタさん・・・」
「笑梨ちゃん、ありがとう。 あとは俺に任せて」
笑梨の両親に向かって言った。
「一体何があったのか。 それはこちらの台詞です。 お二人は娘さんを置いて、こそこそと何をやっているんですか?」
「「ッ・・・」」
二人は明らかに動揺している。 漠然とした言い方だったが、やはり心当たりがあるのだ。
「娘さんは二人の関係が自分のせいで悪くなったと思い、ずっと悩んでいたんですよ。 それを先程俺に打ち明けてくれました」
「「・・・」」
二人は黙り込んだ後、互いに顔を見合わせ素直に謝ってきた。
「・・・これには事情があったんだ」
「事情? 何のですか?」
「・・・実は、笑梨に妹ができるんだ」
「妹?」
笑梨はよく分からず首を捻ったままでいる。
―――笑梨ちゃんは一人っ子だと聞いている。
―――ということは、新しい赤ちゃんが・・・?
あまり目立っていないが母のお腹には赤ちゃんがいるようだった。
「本当はまだ、笑梨には秘密にしておきたかったんだよ」
「そう。 再来月に笑梨の誕生日が来るから、その時にサプライズとして打ち明けようとしていたの」
「だけど母さんは今すぐに打ち明けたいってうるさいから、少し口論に・・・」
「私たち二人からのクリスマスプレゼント。 笑梨に幸せを分けてあげたかったの。 そして、玲也くんにも」
―――それで今までとは違って部屋にやってきたのか。
―――確かにめでたいことだけど、笑梨ちゃんにサンタが俺ってもうモロバレだよな・・・。
玲也が考えていると笑梨が楽しそうに笑った。
「実はサンタさんがお兄ちゃんって気付いていたの。 気付いて気付かないフリをしていた。 だから我儘を言ってもいいかなって」
―――あれ、バレていたのか。
母親はそれを聞き笑梨に近付いていった。
「ごめんね。 笑梨のせいじゃないのよ? 何も笑梨は悪くない。 笑梨は私たちにとって大切な娘なんだから」
両親は真実を話した後一階へと下りていった。
「手紙はもう、渡さなくていいの?」
「ううん、最後まで書いて渡す。 ママとパパのことが好きで、感謝を伝えたいのには変わりがないから」
「そっか。 分かった」
玲也はもう何もすることがないと思い携帯をポケットに入れ白い大きな袋を掴んだ。
「サンタさん、今日はありがとう。 ママとパパを仲直りさせてくれて」
「いや、俺は何もしていないよ」
「でもサンタさんがママたちに言ってくれたから」
「妹ができたと聞いて嬉しかった?」
「うん! 早く妹に会いたい!」
そう言って嬉しそうに笑った。 それを見て一安心したのだが、何故かふと笑梨が表情を落としこう言った。
「・・・玲也お兄ちゃんだと知っていて、気付かないフリをしていたの怒ってる?」
「・・・」
―――来ると思っていたよ、この質問。
―――どう答えよう・・・。
答えを考えていると笑梨が言った。
「サンタさん、また来年も来てくれる?」
「・・・あぁ、もちろん」
「じゃあ待ってる! あ、でも今年はサンタさんから二つプレゼントをもらったんだ」
「二つ?」
「そう! ママとパパの仲直りと、このプレゼント箱に入ったぬいぐるみ! だからサンタさんにもお礼をしなきゃ!」
「お礼はいらないよ。 笑梨ちゃんのその笑顔で十分さ」
そう言うと笑梨は満面の笑みを咲かせてみせた。
「サンタさん、ありがとう!」
-END-
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