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玲也は他の誰かにサンタとしてプレゼントを渡すつもりはない。 元々、笑梨のためだけのサンタの仕事であるが、本人に言われると動揺してしまう。
―――・・・え?
―――何それ、どういうこと!?
―――流石にそのお願いはマズいって、笑梨ちゃん!
―――だってもし笑梨ちゃんの両親にこのことがバレたら・・・ッ!
―――俺はもう顔向けできない・・・。
顔を赤くしテンパっているのはどうやら盛大な勘違いをしているためだ。 白い髭のおかげで表情だけは隠せているが、全身から発する気配は漏れていた。
「・・・駄目?」
笑梨が涙目で見上げてくる。
「あ、えっと・・・。 どうしてかな?」
「最近、ママとパパと仲が悪いの」
「え?」
ここでどうやら勘違いをしていたのだと悟った。
「その原因は私のせいなの」
ただ笑梨の家族が仲が悪いだなんて聞いたことがない。 外から見ているのと、内から感じるのでは差があるのかもしれないが、よく分からなかった。
―――両親の関係が悪くて、その理由が笑梨ちゃんのせい?
「仲が悪いって、どういう風に?」
「『笑梨には絶対に言うなよ』『笑梨にバレたら終わりなんだ』って。 何のことかは分からないけど、私のせいでママとパパの関係が悪くなっているのは確かなの」
先程笑梨の父親とは出会ったばかりで、プレゼントを受け取り今現在所持している。
―――・・・あの笑梨ちゃんの両親が?
―――お父さんは普通に笑梨ちゃん想いのいい人だったぞ。
―――全然関係が悪そうには見えなかったけど・・・。
笑梨のことをチラリと見ると、涙目で今もなお玲也を見据えていた。
「・・・それで? 笑梨ちゃんはどうしたいのかな?」
「私のせいみたいだから、謝りたい。 私はいちゃいけない存在みたいだから」
「・・・」
まだ幼く妹のような笑梨からそのような言葉を聞くとは思ってもみなかった。
「でも私、謝る言葉は好きじゃないの。 だから感謝の気持ちを伝えたいなって」
「感謝の気持ち?」
「そう、お手紙を書きたいの。 私はママとパパの子になれて幸せだよ。 だからありがとう、って」
「笑梨ちゃん・・・」
―――こんなにまだ小さいのに、そんな思いをさせるなんて・・・ッ!
そう思うと玲也も涙ぐんできた。 そして、できる限り手を貸してあげたいと思ったのだ。
「私一人だと不安だから、サンタさんも一緒にいてくれない? 駄目? もう他の子供たちのところへ行っちゃう?」
―――『私だけのサンタさんになって』って、そういうことだったのか。
一人恥ずかしくなっていた自分に呆れてしまった。
「分かった、いいよ。 一緒にいてあげる」
「本当!?」
「あぁ。 でも静かにな」
「うん!」
早速手紙を書くことになった。 普通はサンタは世界中にプレゼントを配るということで長居しないようにしている。 笑梨の両親もそう思っているだろう。
だから必死に手紙に思いを綴っている笑梨を見ていると焦りの気持ちが出てきてしまう。 何か異常事態でも起きたのかと思われる可能性があった。
―――・・・あの笑梨ちゃんの両親が喧嘩、ねぇ。
―――そうは思えないけどなぁ。
―――まぁ、実際に喧嘩の光景を見ていないから何とも言えないけど・・・。
笑梨のためにもただの勘違いでいてほしい。 あのプレゼントを受け取った時の笑顔が嘘だとは信じたくなかった。
―――一応確認してみるか?
ローテーブルの下で携帯を開く。 笑梨が集中して書いている最中に笑梨の両親に連絡しようとした。
―ギシ。
だがその時、誰かが階段を上ってくる音が聞こえたのだ。
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