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あめだまが繋ぐ
冷たい空気が肌を刺す。澄んだ空気が美味しい。もうすぐ冬がくる。
「ねぇ、その飴玉いつも食べてるよね」
「んー、美味いからな」
「大きいから顎疲れちゃいそう」
「はは、そんなことねぇよ」
隣で笑う彼は、私の好きな人。
高校から一緒になって、席が近くてよく話すようになった。それから好みや趣味が合って話が弾んで仲良くなった。
優しくて、面白くて気づいたら好きになっていた。帰り道が同じだからこうして一生に帰ることも多いけれど、毎回緊張してしまう。
「その飴玉懐かしいなぁ」
「食べてたの?」
「お姉ちゃんがね。私が頂戴っていってもくれなかったから、凄く羨ましかった」
「なんでくれなかったの?」
「これは私が買ってもらったからーって」
よく喧嘩したな。姉は独占欲の強い人だった。自分のものには触れてほしくないみたいで、私が姉の物に触ろうものならば怒られた記憶がある。
「お前も買ってもらえばよかっただろ」
「私が買ってもらうのも嫌だったみたい。一回買ってもらった時、すっごい不機嫌になってた」
「めんどくさ」
「ほんとに」
そう言って笑う彼に、初めて会った時のことを思い出した。
「初めまして、久瀬翔です」
今と同じ笑顔で手を差し出す彼に、思えばあの時から好きだったのかもしれない。一目惚れってやつ。
「初めまして、雨宮杏華です」
隣の席で、よろしく、と握手をした。
中々そんな挨拶することないよな、なんて今更になって思う。
「何一人で笑ってんの」
「いや、初めて話した時のこと思い出してた」
「なんか面白い事あったっけ?」
キョトンとしている彼が愛おしい。
「普通、隣の席で初めましてって自己紹介しないよね」
「あー、そうか?俺は結構する。中学の時もしてた」
「え、そうなの?」
「なんだよ」
彼にとってはそれが普通だったらしい。
色々な人がいるなと思った。
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