それが私の幼年期の終わりだった。

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それが私の幼年期の終わりだった。

 本から産まれた私達には、両親というものがいない。老王も王妃も、王子の父母であって私達には関係がない。  私達姉妹にはそれぞれ乳母(めのと)があてがわれた。私の乳母は、エーディトという二人の子を持つ女。コンスタンツェとブリュンヒルデの乳母は、どちらも少女と言ってもいい年頃の未婚の若い女で、もちろん子供はいなかった。    エーディトの子供はエリーザとエルモア。女の子のエリーザとはよく遊んだが、男の子のエルモアの姿はいつの頃からか見ることがなくなった。今思えばエーディトが、異性の子をわたしに会わせるのを憚ったのだろう。  エリーザは教育を受けていなかったので読み書きもできなかったが、世間的なことについては私よりもはるかにものを知っていた。二つ年上(私の年齢は四歳から数え始めたものだが)のこの少女に、良家の令嬢としては知るべきでないことまで教わった。  他に、三姉妹共通の家庭教師として、ディートリンデという独身の中年女性がいた。尋ねたことはなかったが、このひとも私達と同じ、本から産まれた種族だったかもしれない。  毎週日曜には教会に行き、賛美歌を歌ったり神父の説教を聞いたりした。  王子の姿を見られるのはこのときに限られていた。神父も優しそうな老人で、ブリュンヒルデなどはよくなついていたが、私はこの男の前にいるとそわそわと落ち着かない気分になった。  私の影が、そうさせるのだろう。    
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