悪役令嬢は夢を支配する。

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悪役令嬢は夢を支配する。

 私の乳母だったエーディト。彼女にはエリーゼのほかに、エルモアという男の子がいた。私よりは二つほど年下だ。ごく幼いころをのぞいて殆ど会うことはなかったが、どこで何をしているか、調べることはできた。  調理人の見習いとして、一日中ジャガイモの皮を剥いたり、調理場の床を磨いたり、そういった仕事をしていた。身体はずいぶん大きくなったようだが、素朴で大人しい、御しやすい性格のようだ。  私は六夜続けて彼の夢の中に悪魔を送り込んだ。悪魔がそこで何をどの程度やったのかはわからない。あえて知る必要もない。ただ、六夜目の晩、翌日の午後、納屋で私が待っていると伝えさせた。つまりは安息日、朝の礼拝のあとで。  安息日だから、基本的に誰もが家でおとなしくしている。納屋で人にでくわす心配はない。エルモアがどうやって家を抜け出してくるかはわからないが、それは私には関わりのないことだ。  とにかく、私には現実世界での下僕が必要だった。秘密を守れる、忠実な奴隷が。  納屋は干し草でいっぱいだった。乾いた干し草の匂いは、私は絵でしか見たことのない、太陽と青空を連想させた。干し草の山の上にシーツを広げ、その上に横たわり、時間がすぎるのを待つ。つい、うとうととしかけたころ、納屋に人の入ってくる気配があった。  逆光の中に、たくましい少年のシルエットが浮かぶ。 「ア、アーデルハイトさま……まさか、本当に?」 「まさかって? あなたは安息日に何をしにこんなことろに来たの?」 「その、夢です……バカみたいに聞こえるでしょうけど、夢なんです。俺、ああ、すいません、俺、夢の中でアーデルハイト様と……」 「なんでもいいわ。どうせ夢なんだから。でも、これからすることは現実」  私は干し草の上に横たわったまま、エルモアを見つめた。  赤らんだ頬から、苦しげな呼吸から、隠しきれない興奮が伝わってくる。何より、ズボンの内側で膨れ上がったモノが、彼の考えていることを明確に教えてくれる。だから私は言った。 「さあ、服を脱ぎなさい、エルモア」    
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