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私が眠っている間、影が私を離れて好きな暗がりを移動できることを私は知った。そして、私の精神を、馬に乗るようにその影に乗せることもできると、やがて気づいた。
私は夜な夜な影に乗って、コンスタンツェの寝室を、そして王子の寝室を訪れた。
二つの白い身体が一つの生き物のようにもつれあって、喘ぎと叫びと体液を飛び散らせるところを何度も見た。
影と同化している間は、私はそんな光景を見ても何も感じなかった。ただ冷静に、この事実を暴露することがコンスタンツェの弱みになるかどうかを考えた。
コンスタンツェが人間の令嬢で、厳格な父親でもいれば話は別だったかも知れない。だが、私達には家柄も名誉も保護者も存在しない。私達は王子に摘み取られるのを待つ花でしかない。老王は王子とコンスタンツェを結婚させるだろう。一番面白みのない結末だ。
エルモアを使っていろいろ探らせても見たが、彼女の弱みとなりそうな事実は何も出てこなかった。
ならば、弱みを作り出せばよい。
――私がコンスタンツェに恨みを抱いて、彼女を害そうとしている。
悪魔に私の姿をさせて、コンスタンツェに悪夢を見せることで、彼女に妄想を植え付けることができた。
じっさいコンスタンツェには身に憶えのあることだろうし、ほとんど事実そのままなのだから、これほど説得力のある話もない。
私はあとは、ただ時が満ちるのを待った。
夜は、影の中でほくそ笑みながら。
昼間は、王子と彼女の姿を思い出して、みじめな嫉妬に身もだえし、髪をかきむしりながら。
そうして私は知らず知らずのうちに、悪魔と同化していったのだった……
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