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数年間同じことを繰り返した。
コンスタンツェの寝室を影とともに訪れ、暗がりから忍び寄り、眠る彼女に馬乗りになり首を締める。
そういう夢を、毎夜、毎夜、欠かさず送り続けた。
隣に王子がいるときも、昼間、うたた寝しているときでさえ、私達は容赦しなかった。
彼女につきまとい、監視を絶やさず、眠るや否や夢の中に入り込んだ。そして何度も何度も、彼女を殺した。
やがて、コンスタンツェは精神の平衡をくずしはじめた。
むろん、夢の責任を私に問うことなどできない。
幼いときから私を傷つけてきた自覚はあるから、誰かに相談することもできない。
彼女にできるのは、なるべく夢をみないように、なるべく眠らないように努力することくらいだった。コンスタンツェは魔術師に頼り、あるいは薬草を使い、どうしても眠らなければならないならば、せめて夢のない眠りに落ちようと試行錯誤した。だが、見張り続けていれば一瞬の隙は生まれるものだ。私と影は、それを見逃さなかった。これは戦いだった。私達はそう認識していた。
だから私はコンスタンツェとは逆に、眠り続けるためにあらゆる代償を惜しまなかった。酒と東洋の麻薬が力になった。不自然な生活は私の健康を蝕みはじめていたが、私達にとってそれは些細な犠牲でしかなかった。
私とコンスタンツェは、日毎夜毎に色青ざめ、次第にやせ衰え、幻覚性の煙のなかで、焦点の定まらない目を鈍く光らせる、食虫植物めいた化け物になろうとしていた。
――このまま殺してしまうこともできるのだぞ。
悪魔がそう思っていることはわかっていたが、私はそれを許さなかった。
そんな生ぬるいことではつまらない。
コンスタンツェからはすべてを奪う。
私は、そう決めていた。
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