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崩れ落ちる血まみれの女。
コンスタンツェの腕を顔をドレスを染める返り血。
掴みかかるいくつもの手、手、手をかいくぐって、コンスタンツェは私に肉迫した。
「アーーッ!」
今度はふりかざすのではなく、刺突の態勢で私に突進してくる。
私の名前を叫んでくれればよかったのだが、彼女が発したのは誰にも意味のわからない絶叫だった。
そしてこの瞬間、一体だった私達に分裂が生じた。私と悪魔、それぞれの判断のずれだ。
私は刺されるつもりだった。それでこそコンスタンツェを罪人に突き落とせる。彼女がずっと突きつけられるはずだった、アーデルハイトを傷つけたという罪状で。
だが、悪魔は違う判断をした。
人々は見た。礼拝堂の外から差し込む光の中、私の影が命を吹き込まれたかのように突如動き出して、コンスタンツェの影を掴み止めるところを。
見間違いではありえなかった。
私の影は、コンスタンツェの影からナイフをもぎ取り、コンスタンツェの身体は影に操られたかのような動きをして、ナイフをとりおとした。
悪魔は私を守ったのか?
いや、そうではなかった。この有様を目撃した人々は、異口同音に噂し始めたのだから。
アーデルハイトが悪魔の技で影を操った、と。
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