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「こんにちは」
鈴を転がしたような可愛らしい声が耳元で聞こえた。
振り返ると、そこには妖精がいた。かの有名な少年と一緒にいる妖精と同じくらい小さな妖精が。
「あ、どうも」
「あら、反応薄いのね」
「正直、どうでもいいので。何か御用ですか? 」
「いいえ、特にはないわ。初めまして、嘘つきの妖精よ」
その妖精は、上品にお辞儀をしながらそう言った。
「嘘つきは自分でそういわないんじゃない?」
「妖精は大抵嘘つきだから。人間にあったらこう言うように言われているのよ。人間に恨まれたら溜まったもんじゃないからね」
「へえ、大変だね」
「まあ、私は確かに嘘つきだけどね。私が今から言うことの8割は嘘だと思っていいわよ」
「へぇ、じゃあさっきまで話してたのは本当だったの?」
「さあ、どうかしら」
妖精はそれはそれは愉快そうにコロコロと笑った。人間の困惑した顔でも好きなのだろう。
「ねえ、私たちの妖精の村に遊びに来ない?」
「え?」
「景色が綺麗なとても素敵なところよ」
「えぇ……嘘でしょ?」
「大丈夫よ、気に入らなかったらすぐに帰れるから」
「いや、でもなぁ……」
「いいじゃない。
どうせこの社会にいても良いことなんて起こりっこないんだから」
「……」
「あなたはこっちにきた方が幸せだと思うわよ」
「……ま、それもそうか」
私がそう言うと、妖精は満足そうにニコリと笑って私の手を取った。
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