DRY

そして、私は会社を辞めた。

母さんが私を心配して、しばらく実家に戻ることになった。
少し離れる時間が必要だと言われた。
この家のすべてが彼との思い出だったから。

実家でも私は寝て起きてだけの繰り返しで、ずっと人間じゃないみたいだった。

そして実家に帰って1週間もしないうちに、
彼を引いた子が親御さんと一緒に謝りに来た。

真冬の寒空の下、彼らはひたすらに謝り続けた。
凍るように冷たい地面に膝を付けて、嗚咽しながら何度も何度も謝っていた、らしい。

私が彼らの前に立つことはなかった。
母さんが玄関先で対応しているのを家の中から聞いたり聞かなかったりしていただけだ。

彼らの前に立てば、何を言い、何をしてしまうか自分でも予想できなかったから。彼らに会いたくなかったから。
「もう大丈夫です、謝らないでください」だなんて天使みたいなことは言えない。謝ったって彼が戻ってこないことくらい知っている。

その大学生は恋人を迎えに行くところだったらしい。携帯でメッセージを見ようとした時、その一瞬で、

私の愛する人をこの世から消してしまったという。

その後も私はただ呼吸して時々食事するだけの生活を送り続けた。