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あいつの声を聞いたのはそれが最後だった。
あの後何度も話し掛けはしたが、
あいつの声は聞こえてこなかった。
だけど、私はそのことに不思議と納得していた。
なんとなく分かっていたような、覚悟していたような気がするのだ。
実家で、
母さんと昔のアルバムを見返した時のことを思い出す。「昔の自分を見返すのも面白いわよ」って見せてくれたのだ。
そこには玄関で私と、今より小さなサボテンの映った写真があった。
私は照れくさそうに、ぎこちないピースをしている。
その横の棚には今よりも二回りくらい小さなサボテンがあった。私が小学校低学年の頃だろうか。
よく見ると、あいつの頭には小さな花が咲いていた。
目を凝らさないと見逃してしまいそうなほどの
小さなピンク色の花だ。
当時私は転校したばかりで、学校に馴染めず毎日泣いていたそうだ。母さんは転校したことを後悔していて私のことを本当に心配していたらしい。
でも、ある日サボテンの花が咲いているのを見て私はとても喜んだんだとか。母さんは私の笑顔を見てすごく安心したと教えてくれた。
あいつは学校に行くのが憂鬱な私を慰めてくれたみたいだった。
そういえば、私があいつの寿命について話した時、あいつは言いたくなさそうだった。
寿命のことも私が「知っていたら困る」と言った。
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