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袋は要るか、箸はどうだ
閑散とした田舎街にポツンと佇むコンビニ店。
世間の例に漏れず24時間営業であるために、人通りが無くとも明かりが煌々と輝いている。
深夜2時過ぎ。
通行人すらも見かけない頃合いなのだが、1人の男が来店した。
その人物はたいして物色もせず、お目当ての商品を手に持つと、そのままカウンターまでやって来た。
気だるげに品をカウンターに投げ置き、相手の顔も見ずにスマホをいじりだす。
対する店員も、接客中とは思えぬ顔つきであるため、どちらも似たり寄ったりの態度となる。
「袋はおつけしますか」
「要らねぇ」
どちらも感情の平たい、沈んだ声で言った。
「お箸は何膳おつけしますか」
「はぁ? お前何を言って……!?」
客の男は思いもよらぬ問いかけに左右を見渡した。それから徐々に顔を青く染めると、何も手につけず店から飛び出した。
後に残されたのは、カウンターに置かれたカップ麺ひとつ、それと無気力すぎる店員だけであった。
ー終ー
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