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5限目の授業の終わりは、昼にはうるさいくらいの華やかさに満ちたキャンパスが、黒いマントに包まれたように暗く静かになる。
その静けさと暗さに追い立てられるように、授業が終わると私の足はキャンパスから駅へ向かうために早足になる。大学の長い夏休み明けの10月、日はどんどんと短くなり、その暗さと涼しさに私の心は憂鬱だった。
大学の5限は18時半に終わりで、17時からのコンビニバイトのシフトにも入れないからなるべく避けたいのだが、必修科目のパソコン基礎の授業の割り当てが自分だけこの水曜日の5限になってしまった。大学で仲良くしている四人組のうちの私一人だけが、この時間になってしまったのは、まったくついていないということこの上ない。
実技を伴う授業なのだから、友だちにこうかな?と軽く確認しあいながら進めたいのに、知らない人ばかりじゃそれもできないし、その上私は人の話を聞いているつもりでも、いつのまにか好きなアニメや音楽、マンガのほうに意識が飛びがちで、先生が説明を終えてじゃあやってみてくださいと言っても、何をやればいいのかわかっていないことがよくあるのだ。
一回目の授業は説明がメインだったので、この前読み返したマンガについて考えていても何とかついていけた。でも今回からは、ガッツリ実技だ。不安の一言だ。勇気を出して隣の席の人に話しかけようと、夏休み明けは意気込んでいたのに、肝心の隣の席を割り当てられている生徒は、初回から欠席しているようで、まったく当てにならない状態だ。
私が落胆した気持ちで授業開始のチャイムの音を聞いていると、それと同時に息を切らしながら入ってきたのは、隣の席の生徒だった。明るい茶髪と軽い身のこなしがこの無機質なパソコンルームの中で、そこだけカラー写真のようだった。
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