プロローグ

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 しゃこしゃこしゃこしゃこ  ……納豆は嫌いじゃないが、流石にこれだけあると結構キツい。醤油もタレも、何も含まないでこの物体を混ぜていると、混ぜている者の食欲と精神力……なんていうかやる気のようなものを無駄に奪っていく。何をしてるんだ俺は。  しゃこしゃこしゃこしゃこしゃこしゃこ。どろり  混ぜてパックからボウルに納豆を放り込む。というか、注ぎ込む。 「稔輝、起きてる?」 「えぁ? あ、うん、寝てない」 「ふーん。まぁいいや、カラシ、最後に入れてね」  正直あいつにもお見通しだったのだろうが、実際に半分以上意識がとんでいた。  単調な作業が眠くて仕方ない。カラシを入れれば少しは眠気が覚めるだろうか。  十パック以上の納豆が入ったボウルにカラシをチューブに一本分ぐにゅ、といれてぐちゃぐちゃ混ぜる。うわ、辛そう。  ぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃ  カラシの臭いが鼻の中に充満し、意識が嫌な気分中心に戻ってくる。  何をしてるんだ俺は。  ぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃ  頭の中もぐちゃぐちゃ、自分の脳みそを混ぜているような気分になる。  ぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃ  カラシの臭いにも丁度慣れてきた頃、単調な作業のおかげで再び睡魔に襲われる。  溜め息と同時に薄れていく意識の中、俺は心底後悔していた。
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