旅は道連れ

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「ひもなしバンジーって飛び下りてるだけだよ!」 「あー、そういわれればそうかもな」  この脳みそ筋肉男が、とこづきたい衝動をこらえる。……それ以前に――。 「そんなことしたら死ぬじゃねーか!」 「大丈夫だ、下にはちゃんと……」 「あぁ、網とかあるんだよな、やっぱり」 「救急車と霊柩車が並べてある」 「並べんなそんな不吉なもん!!」  ていうか死んだとしてもいきなり霊柩車には乗らないのでは。 「お前は丈夫だから、救急車で済むって」 「どーいう計算だよそれ! ていうか学校がそんなことして問題になんないの?」 「あー、体育には赤点付くことそんなにないし、よくわからん」  自分から口をはさんできたくせに、質問に答えずに去っていく。畜生、何か腹が立って来た。 「で……そういうことか、勇」 「うん、そういうこと」 「どうしよう?」 「どうしようもないよ、てか僕もだし」 「…………」 「買い物行こう、あとヤマゴボウ取りに行く」 「は?」 「参加するでしょ? おにごっこ」 「…………は?」 「だーかーら。全教師対、僕らの鬼ごっこだよ」 「参加しなかったら?」 「ひもなしバンジー」 「捕まったら?」 「ひもなしバンジー」 「逃げ切ったら?」 「ギリギリ黒点?」 「成績会議の前日休みなのって」 「……そうなんじゃない?」 「数人ケガで留年って」 「そうなんじゃない?」 「……やるのか?」 「うん、こうなったら本気で逃げるよ」 「…………」 「ごめん、伝えるの遅くて★」 「ふざけんなぁぁ!! それなら死ぬ気で提出物出したのに!」  前言撤回。いい奴だなんてとんでもなかった。 「まぁまぁ、旅は道連れ世は情け。笑う門には福来たる。っていうし♪」  妙に上機嫌な勇の満面の笑みを横目に見ながら、『笑う世間は鬼ばかり』という創作ことわざが頭をよぎったが結局最後まで言い返せなかった。
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