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マシュー・トンプソンの通うアルタム学園初等部は、五歳で入学、十歳で最高学年の六年生を迎える。
六年生になったマシューは初めての幻魔生物学の授業を受けていた。
「六年生からは新たな教科として幻魔生物学が加わります。中等部ではさらに詳しく学びますが、六年生では特に身近で有名な幻魔生物を取り扱います。幻魔生物が何か分からないという人はいませんね? みなさん、一度は出会ったことがあるでしょう。例えばピンフ。教科書九ページを開いて」
先生が説明を続ける。
「ここにイラストが載っていますね。ピンフは妖精と呼ばれる幻魔生物で、出会った者に小さな幸福をもたらし——」
後ろの席のパットが、マシューの背中をツンツンと指でつついた。振り返ったマシューの手に、パットは一枚の小さな紙切れを握らせた。
『放課後!トリーチ! グレッグ、スタン、チャック、モリー、エミリー、パット』
トリーチの誘いの手紙だった。トリーチというのはマシューたちが考えたオリジナルのボール遊びのことで、みんなは決まって庭の広いマシューの家に集合した。
ママにまた小言を言われるぞ。マシューは母親のロザンナの顔を思い浮かべた。
「トンプソン、お得意の空想タイムですか? それとも、昨日提出し忘れた課題について考えていたのかしら?」
先生の言葉に、みんながケラケラと笑う。周りを見るとマシュー以外の全員が手を挙げていた。
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