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「出ていけ、この悪魔め!」
男が力強く振り上げた箒がバードイの左腕をかすめた。腕には箒の擦り傷が付いたが、どれが今付いた新しい傷なのか区別がつかないほどバードイの体は既に傷だらけだった。
——もう少しで男に手が届くところだったのに。クソッ!
バードイはやっとありつけた食料を目の前にして見つかってしまうという、もう何度目か分からない失敗に腹を立てた。
滅茶苦茶に振られる箒に追いまくられて家の外へと逃げ出て、庭一面を覆う枯れ草の中へと飛び込んだ。背の高い茶色の枯れ草の群生がバードイの体の色と同化し彼を隠す。
直立しても大人の男の膝丈程度しかないバードイは、体を丸めてドッジボールのボールほどの大きさになった。
草むらの中のボールを探すのが難しいように、男もまたバードイを見つけることができなかった。
男はバードイが二度と入ってこれないように、ピシャリと家のドアを閉めしっかりと鍵をかけた。
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