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不夜城も失恋女の一人酒には甘くないといって公園なんかでやけ酒はマズい
それから。
根っからの小心者で、喫茶店くらいはともかく、一人でレストランなんて入れない私。しかもファミレスじゃなくて、本格的なコース料理が出てくるイタリアンレストラン。
週末だし、一応席だけ予約してあったレストランにキャンセルの連絡を入れて。
……ミジメだ。
やけ酒でも飲みたいけど、一人で飲み屋になんか入れないのは前述の通り。
虚しいけど、コンビニでお酒買って帰ろう……。
で、缶チューハイ持てるだけ買って。
勢いで9%のヤツとか買っちゃって。
わりとアルコールには強いけど、でも普段は買わない濃さ。
でも。
そのまま、誰もいない部屋に帰るのが、何だか切なくて。
コンビニの前の公園で、ベンチに座って、缶チューハイを飲んで。酔い始めたら、ますます切なくて。
……大学に入って、同じサークルに入ったことがきっかけで出会った。
そのうち何となく付き合い始めて、ケンカもしたけど、別れることなんて、考えたことなかった。
付き合って5年……そろそろ、結婚、っていう文字がちらついてすら、いたのに。
泣いた。
ボロボロ、涙をこぼしながら、缶チューハイあおって。
空になった缶を握りしめ、力をこめた。
アルミニウムのやわな缶は、すぐにグシャッと潰れて。
「バカアァァァァァッ!」
公園の隅の木の幹に目掛けて、私はその缶を投げつけた。
カンッ、と軽快な音を立てて、空き缶が命中すると、少しだけ、スカッとした気持ちになった。
私は次の缶を開けた。
勢いよく飲み干して、また空き缶を木にぶつける。
気が付いたら、地べたに座り込んで。
何度も、何本も……。
「痛っ!」
空き缶がそれて、公園の入り口に立っていた人に命中してしまった。
「す、すみま……」
慌てて駆け寄ろうとして、私はよろけた。
思った以上に酔っていて、頭がグラグラした。
「大丈夫?」
耳元で聞こえた声は、まだ若い男の子みたいだった。
私は彼の腕の中にいた。
転ぶ寸前に抱き止めてくれたんだ。
「あ、ありが……」
「……センセ?」
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