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「……あの、続きは帰ってからお願いしていいかな? 私は見ていたいけど、パパが運転に集中出来ないから」
そうだ! ルミさんもお父様もいたんだ!
バッと身を引いて、私は身をすくめる。顔から火が出そうで熱い。うつむいていてよく分からないけど、多分尊流も。
「じゃあ、舞子ちゃんのご実家に行きましょうか?」
「……いえ、でも、留守かもしれません。今日は平日ですし」
お母さんと年齢差のあるお義父さんは定年になって家にいると思うけど、お母さんはまだバリバリの正社員で働いている。
年度始めの今日も仕事じゃないかな?
「あ、大丈夫よ。むしろ、今日がいいんだって言っていたわ。週末からシンガポールへ出張なんですって。すごいわ。さすがバリキャリね」
……ルミさん、いつの間に。
って言うか、これ、お母さん(と、多分お義父さんも)まで知ってて、知らないの、私だけだったの?!
いや、いいんだけどさ。尊流から「これからもずっと愛してる」って言われて、私も、同じ返事をして。
あれ、プロポーズだった、ってことよね?
うん、あの時、初めて、「好き」じゃなくて、「愛してる」って、言われたし。
尊流が初めて作ったクッキーに添えられた、愛の言葉。高校生の尊流から親のお金で指輪とか貰うよりも、ずっと意味のある、贈り物。
だから、いいんだよ、これで。
……ちょっとモヤモヤするけど、さ。
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