ただのドライブだと思っていたら家族総出で実家にご挨拶とか心臓に悪い

7/8
前へ
/77ページ
次へ
 そんなやり取りをしているうちに、私達の乗ったボルボは、見覚えのある一軒家に到着し。 「ただいま……」 「お帰りなさい」  え?  玄関先で出迎えてくれたお母さん、おとっときの訪問着姿。 「早く上がって! 佳也子が奥で待ってるから」 「え? 佳也子おばさん?」  お母さんの親友の佳也子おばさんがなんで?  「あ、舞子ちゃん! 早く早く」  奥から顔を出した佳也子おばさん……実は、お義父さんの妹なので、義理の叔母さんにもなる。 「さ、脱いで。時間がないから、髪の毛はハーフアップでいいわね」  部屋の奥には成人式に着たっきりの桃色の振袖が広げられていて、美容師で着付けの免許も持っている佳也子おばさんは、あっという間に私にそれを着せて。 「うん、やっぱりよく似合うわ。華子の若い頃そっくり」  振袖は、お母さんから譲られたものだったので。ちなみに華子はお母さんの名前。 「佳也子おばさん、いったい……?」 「だって、今日は結納でしょ? 華子からそう聞いているけど」 「ゆ? 結納?!」  どういうこと? 単なる挨拶じゃないの? 「あ、出来たわね。じゃ、佳也子も一緒に。ああ、使わないと思ってたけど、床の間作っておいて良かったわ」  お義父さんの趣味で誂えた床の間付きのお座敷には、すでにお義父さんと、尊流とルミさんとお父様もいて……って、いつの間にスーツ姿なのよ?! 「きゃあ! 舞子ちゃん! とっても綺麗よ!」  はしゃぐルミさんに引き換え、スーツ姿の尊流は、緊張のためか、少し青ざめている。  うん、制服(といってもほぼ自由服なので、たまにしか見ないけど)姿よりも、ずっと大人っぽくて……素敵。
/77ページ

最初のコメントを投稿しよう!

77人が本棚に入れています
本棚に追加