77人が本棚に入れています
本棚に追加
そんなやり取りをしているうちに、私達の乗ったボルボは、見覚えのある一軒家に到着し。
「ただいま……」
「お帰りなさい」
え?
玄関先で出迎えてくれたお母さん、おとっときの訪問着姿。
「早く上がって! 佳也子が奥で待ってるから」
「え? 佳也子おばさん?」
お母さんの親友の佳也子おばさんがなんで?
「あ、舞子ちゃん! 早く早く」
奥から顔を出した佳也子おばさん……実は、お義父さんの妹なので、義理の叔母さんにもなる。
「さ、脱いで。時間がないから、髪の毛はハーフアップでいいわね」
部屋の奥には成人式に着たっきりの桃色の振袖が広げられていて、美容師で着付けの免許も持っている佳也子おばさんは、あっという間に私にそれを着せて。
「うん、やっぱりよく似合うわ。華子の若い頃そっくり」
振袖は、お母さんから譲られたものだったので。ちなみに華子はお母さんの名前。
「佳也子おばさん、いったい……?」
「だって、今日は結納でしょ? 華子からそう聞いているけど」
「ゆ? 結納?!」
どういうこと? 単なる挨拶じゃないの?
「あ、出来たわね。じゃ、佳也子も一緒に。ああ、使わないと思ってたけど、床の間作っておいて良かったわ」
お義父さんの趣味で誂えた床の間付きのお座敷には、すでにお義父さんと、尊流とルミさんとお父様もいて……って、いつの間にスーツ姿なのよ?!
「きゃあ! 舞子ちゃん! とっても綺麗よ!」
はしゃぐルミさんに引き換え、スーツ姿の尊流は、緊張のためか、少し青ざめている。
うん、制服(といってもほぼ自由服なので、たまにしか見ないけど)姿よりも、ずっと大人っぽくて……素敵。
最初のコメントを投稿しよう!